「歩き続けるとひざが痛くなる。」
「ウォーキングやランニングでいつも同じところばかり痛くなってしまう」
といったお悩みは多く聞かれます。
ヒトの歩行は、
着地時の床からの衝撃を緩衝する
効率よく荷重を移動させる
などの役割がうまく機能した上で成り立っています。
歩行はいくつかの層に分けて考えることができ、各相ごとに、関節を守りながら、効率的に重心移動していくための役割をもっています。
今日は、歩行周期の全体像と各層の役割をお伝えしていきます。
1.立脚期と遊脚期
2.歩行時に必要とされる機能
3.各相の機能と役割
1.立脚期と遊脚期
まず歩行周期は、大きく2つに分かれ、足が地面についている立脚期と、足が地面から離れてスイングにより足が前に運ばれる遊脚期があります。
立脚期:歩行周期中の足が地面についている時期。
遊脚期:歩行周期中の足が地面から離れていて、スイングにより足が前に運ばれている時期。
2.歩行時に必要とされる機能
・荷重の受け継ぎ
足の振り出しを終え着地したばかりでまだ安定性が十分に高くない脚に、すばやく荷重を移行するという課題が要求されます。
・単脚支持
片方の足が床から離れているとき、地についてる脚は身体を支え、前方への動きをキープします。
・遊脚期の脚の前方移動
足が床から離れると、床の上を身体の前方に向かってスイングします。前に振り出されている足は膝関節の伸展によって終了し、続いて踵から接地する準備がなされます。
3.各層の機能と役割
1.初期接地(イニシャルコンタクト)
脚が地面に接触する瞬間です。このタイミングにおける関節のポジションが衝撃吸収の度合いを決定します。
2.荷重応答期(ローディングレスポンス)
反対側の脚が地面から離れた瞬間です。この相では、体重がすばやくほぼまっすぐ伸ばされた脚に移ってきます。
3.立脚中期(ミッドスタンス)
反対側の脚が地面から離れている時期です。しっかりと地についている足を支点とした前方への動き、脚と体幹の安定性の確保が要求されます。
4.立脚周期(ターミナルスタンス)
観察肢の踵が床から離れた時です。この相では、身体を支持足より前へ運ぶこと役割があります。
5.前遊脚期(プレスイング)
観察肢のつま先が床から離れた瞬間。足を床から離して前へ振り出す準備体勢を整えます。
6.遊脚初期(イニシャルスイング)
観察肢のつま先が床から離れた瞬間。この相では、床から足を離すこと、観察肢を前に運ぶことが要求されます。
7.遊脚中期(ミッドスイング)
遊脚の中間期です。この相では、観察肢を引き続き前に運ぶこと、観察肢が十分床から離れていることが確保される必要があります。
8.遊脚終期(ターミナルスイング)
観察肢の足が床に触れる直前。この相では、観察肢を前へ運ぶことの終了、観察肢の立脚の準備の時です。
今日は歩行周期の全体像と各層の役割をご紹介しました。
歩行の各相で体の機能として要求される課題は変わってきます。
どのタイミングでどの筋肉を使っているのか、どのような動きの連鎖をしているのかを、分解しながら見ていくと
いつも痛めやすい関節や筋肉に過剰な負担をかけている原因を探ることができます。
原因がわかれば、それに応じたアプローチをすることができます。
トレーニングの時も実際の動きに直結するような動きが習得できるように組み立てていきたいと思います。
参考文献:医学書院『観察による歩行分析』