膝の関節可動域が歩行やしゃがみに及ぼす影響

膝関節に可動域制限があると、歩行やしゃがみなどの動作に影響します。

関節可動域の制限因子としては、疼痛、皮膚の癒着や伸張性の低下、関節包の癒着や短縮、筋・腱の短縮および筋膜の癒着、筋緊張の亢進、関節内運動の障害、浮腫、骨の衝突などがあります。

画像診断が必要なものもありますが、今回は、アライメント・動作改善に直結するもの、実際のトレーニング場面で評価することをまとめました。

筋性の制限因子の評価

膝周辺の筋は、股関節や足関節をまたいでいるニ関節筋が多いので、股関節や足関節のポジションを変えて評価することがポイントです。

膝を曲げる方に制限がある

股関節中間または伸展位で膝を屈曲した時、制限されるのが、ニ関節筋である大腿直筋、大腿筋膜張筋など。

大腿筋膜張筋は、その走行から膝屈曲すると外展・外旋してくる。

股関節屈曲位で膝屈曲しても制限がある場合は、単関節筋である内側・外側・中間広筋の伸張性低下の可能性が高い。

膝を伸ばす方に制限がある

股関節屈曲位で膝伸展に制限がある場合は、ニ関節筋であるハムストリングスの伸張性の低下

足関節背屈で膝伸展に制限がある場合は、ニ関節筋である腓腹筋、足底筋の伸張性低下

足関節底背屈で膝伸展変わらなければ大腿二頭筋短頭や膝窩筋の伸張性低下

以上のように動かしながら筋を見ていき、伸張性が乏しいところは施術者による手技やストレッチをしていきましょう。

自主練習で行う場合は、股関節や足関節のポジションに気をつけてみてくださいね。

膝蓋大腿関節(PF関節)の可動性評価

『膝のお皿』といわれる膝蓋骨には、筋に加えて靭帯や腱などさまざまな軟部組織が付着し、軟部組織の伸張性低下がPF関節の可動域制限につながります。

膝蓋骨を把持して、上下・左右に動かし、どの組織の伸張性が乏しいか見ます。
主には、膝蓋骨の上にある膝蓋上嚢、膝蓋骨下にある膝蓋下脂肪体、左右に付着する靭帯。

中でも、膝蓋下脂肪体は、変形性膝関節症で組織の繊維化により伸張性が低下しやすく、膝屈伸の動きに影響します。

正常な動きでは、膝を伸ばすとき、膝蓋骨が上方に動き、膝蓋下脂肪体は前方に出てきます。しかし、膝蓋下脂肪体の伸張性が低下していると、膝蓋骨が上方に動かず、膝伸展が制限されます。

引用:極める変形性膝関節症の理学療法

膝が完全に伸び切らないと、荷重時の筋発揮がうまくできないため、歩行や片脚立ちに影響してしまいます。
なので、こちらの動きもしっかり引き出しておきましょう。

大腿脛骨関節(FT関節)の可動性評価

大腿骨に対する脛骨の動き(内旋・外旋)のパターンを評価します。よくみられるのは、大腿骨内旋、相対的に、脛骨外旋でねじれているパターンと言われています。

静止立位や、エクササイズ時にも評価できますが、筋や組織の伸張性の影響をみるためには、施術者が他動的に膝を屈伸して評価していきます。

膝屈曲すると、大腿が外旋してくる

大殿筋や股関節深層外旋筋の伸張性低下

膝屈曲すると、大腿が内旋してくる

中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋の伸張性低下

膝屈曲すると、脛骨が外旋してくる

腸脛靭帯、外側ハムストリングスの伸張性低下

膝屈曲すると、脛骨が内旋してくる

膝窩筋、内側ハムストリングスの伸張性低下

筋の伸張性が低下していればストレッチをしましょう。伸張性に問題がなければ、正しい筋肉の使い方・運動パターンをピラティスで行っていきましょう。

脛腓関節の可動性評価

脛腓関節は、脛骨と腓骨間の関節です。直接、膝関節を構成する関節ではありませんが、腓骨には大腿二頭筋の付着部があり、大腿二頭筋の伸張性低下が、膝関節の伸展制限につながったり、外側FT関節の可動性に影響を及ぼす可能性があるため、見ておきます。

以上、組織の伸張性に低下がある場合についてまとめました。(※炎症や外科的侵襲の影響がない場合です)
介入としては、他動的な手技、ストレッチ、関節包内運動など行い、その後、自分でその範囲を動かせるようになること、最終的にはアライメントや動きの改善につなげていきましょう。

『参考文献』

・石井慎一郎,ほか:膝関節理学療法マネジメント,p68-79,メジカルビュー社,2018.

・斉藤秀之,ほか:極める変形性膝関節症の理学療法,p38-39,文光堂,2014.

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